《教育講演 Ⅲ》
腹部超音波検査入門
~症例から学ぶ腹部超音波検査のピットフォール~
講師 : 箱崎幸也(医療法人社団元気会 横浜病院)
(第3会場 10:00~11:00)
超音波検査は非侵襲的でリアルタイムに多くの情報が得られることから、臨床現場だけでなく検診でも有用な診断ツールである。しかし超音波検査は「operator-dependency」 の検査法であり、いくら有用でも「良好な条件下で適切な手技で走査し見落とし例をなくし、理論的分析にて幅広い鑑別診断の知識をもとに診断」されなければならない。見落としをなくして的確な診断に至るには、多くの時間と経験が必要になる。しかし、解剖を立体的に理解し多くの正常画像を経験し任意断面の描出走査を繰り返すことで、異常画像(病変)が目に止まることで描出能を高めることが出来る。
超音波検査で最も大切なことは、先ずBモードに於いて「存在」をしっかり認識できるかどうかであり、その基本は見落とし症例をいかに防ぐかである。見落とし例を防ぐには、1. 各臓器の死角を十分に認識、2. 各チェック項目に添っての基本走査の徹底(いま何を観察しているのか把握、定型画像の描写)、3. 適切なプローブ選択や画像条件の設定(深度に合った周波数、フォーカスは関心深度、関心領域に合わせたゲイン調整、STC調整で不要アーチファクト軽減)、4. 観察部位に適した呼吸、体位変換やプローブ圧迫(押し上手)を適切に行う、5. 事前データを確認(前回のUS/CT/血液検査結果等)するも余分な先入観は持たない、6. 受診者の生命予後を左右するという強い自覚、などが大切と考える。
超音波検査検診における膵臓がんの発見率は0.007%と低く、がん検診に馴染む検査ではない。しかし、膵管拡張や膵嚢胞を的確に指摘することで、膵臓がんのハイリスクグループを拾い上げがん死亡の個人リスクを下げることが可能である。また高輝度膵と生活習慣病との密接な関連性の報告も有り、総合検診としての腹部超音波検査の役割は重要である。
本講演では、的確な描出ポイントや診断能力の向上に少しでも寄与するために、私どもの基本操作を紹介し見落とし症例とともに教育的な症例を多く呈示したい。