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《一般演題 Ⅰ》

座長 : 萩原廣明(前橋市医師会)

(​第1会場 9:20~10:05)

発表時間は5分で質疑応答時間は2分です

​時間厳守でお願いします 

1)新潟県の胃内視鏡検診の現状と対策

   成澤林太郎¹⁾³⁾ 加藤俊幸²⁾³⁾ 小林正明¹⁾³⁾ 小越和栄¹⁾³⁾

   1)新潟県立がんセンター新潟病院 2)新潟県健康管理協会

   3)新潟市医師会

 2017年4月現在、新潟県内で胃内視鏡検診を実施している市町村は新潟市と胎内市の2市のみである。2015年3月の胃がん検診ガイドラインの改訂、ならびにその後の厚生労働省の「がん検診実施のための指針の改定(2016年2月4日付)」により、2016年4月から内視鏡による対策型胃がん検診が実施可能となった。しかしながら、新潟県において2016年4月以降新たに内視鏡検診を導入した市町村はない。そこで、新潟市の導入経験ならびに県内外から新潟市に寄せられる質問や問い合わせなどから、内視鏡検診導入時の問題点を明らかにし、その対策についても述べる。

 内視鏡検診導入時の問題点は、1)集団検診から個別検診への移行、2)マンパワーの確保(内視鏡施行医ならびにダブルチェック医の確保が難しい地域が存在)、3)内視鏡施行医のレベル向上ならびにその維持、4)精度管理の担保(検診実施機関の体制作り、標準的撮影法などの実施手順の確立・普及、ダブルチェック医のレベルの均一化、ダブルチェック結果のフィードバックの仕方、プロセス指標の継続的なモニタリングなど)、5)X線に比べ高い検診料、6)内視鏡機器の洗浄・消毒、7)内視鏡検査時の鎮静剤、などと考えられる。

その中でも、新潟県にとって最も大きな問題は内視鏡施行医ならびにダブルチェック医の確保である。因みに、2017年6月1日現在、県人口は2,270,558人で、30市町村、7つの二次医療圏に分かれている。また、2014年12月31日現在の医師数は人口10万対188.2人(全国平均:233.6人)で、47都道府県中44位である。

 医師不足から、単独では内視鏡検診を実施できない市町村が存在するため、隣接する市町村で「グループ」を形成し、その中で内視鏡施行医やダブルチェック医の確保を行う案が検討されている。また、新潟市で運用を開始している画像伝送システムを利用し、内視鏡医の多い地域にダブルチェックを依頼する案も検討中である。

2)太田市胃がん個別検診の運用

   江原浩司、関口利和、中野正美、李雅弘(太田市医師会)

 胃がん検診はながらくレントゲン検診のみが推奨されていたが、27年3月に出された胃がん検診ガイドラインで内視鏡検診も推奨されるようになった。太田市では平成11年から内視鏡検診を導入してきた。内視鏡検診の導入により、低迷していた受診率が改善し、胃がん発見率も上昇した。

 27年度の検診受診状況は、受診者17,148人、カバー率24.1%で、そのうち16,248人、94.8%が個別検診の受診であった。個別検診での発見胃がんは内視鏡で62例あり、発見率は0.38%であった。初回受診者で34例(早期21、進行13)、逐年受診者で28例(早期26、進行2)と、初回受診者では1/3が進行がんでの発見となっているのに対し、逐年受診者ではより早期での発見ができている。

 20年から25年ではABC検査も同時に行い、各群の発見がん数、発見率はA群62例、0.19%、B群102例、0.51%、C群187例、1.03%、D群46例、1.17%であり、ピロリ抗体陽性がんは72.8%、PG陽性がんは58.7%であった。26年からはピロリ抗体のみで、67例のうち49例、73%が陽性であった。

 太田市の胃がん個別検診の運用は、参加要件は手あげ方式で、検診精度を保つため当初から2次読影委員会を設置し、全症例のダブルチェックを義務付けている。また医師会で追跡調査を行い、治療状況も把握するようにしている。それを元に症例検討会を実施している。精度管理委員会で年度末ごとに成績を分析し、対策を立てている。(ABC検査を併用、ファイリングシステムの導入、ピロリ検診の導入、ピロリ感染胃炎の評価などを取り入れてきた)

検診結果を元に、よりよい胃がん検診を行っていくよう太田市検診医療機関、医師会、行政の三者で協力をして改善に努めている。

3)平成30年度からの胃内視鏡検診導入について(茨城県版)

   石田 理¹⁾ 笠野哲夫¹⁾²⁾ 神長憲宏¹⁾³⁾ 齋藤洋子¹⁾⁴⁾

   1)水戸市医師会 2)かさの内科医院 3)神長クリニック 

   4)茨城県メディカルセンター

 がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針が、平成28年2月4日に厚生労働省が一部変更した内容を発表し、胃内視鏡検査が検診の項目として追加された。発表時期が年度末だったため、平成28年度からこの指針を反映している都道府県は少ないと考えられるが、平成30年度からは、都道府県・自治体ともに導入準備が整い、内視鏡検査が本格稼動することが想定される。

 水戸市では、平成23年度から内視鏡検査を導入している。導入当初は、水戸市独自ルールを設け稼動させていたが、平成28年度からはこの指針を基準に、受診間隔を毎年から隔年に変更した。ただし、個別検診で隔年検診の受診者把握は難しいので、判断しやすい方法を採用している。また、内視鏡検査導入当初からリスク層別化検査を実施している。ピロリ菌陽性者に対し、除菌治療を勧奨するためである。平成25年2月から保険収載され、除菌治療実施者が増えた。今回の改正でリスク層別化検査は指針から外れたが、除菌治療から胃がん減少につなげるため、現在も併用しながら実施している。

 対策型検診は、画一的に検査が実施されることが望まれる。個別検診で実施するときは特に精度管理を保つことが重要である。水戸市では、毎年定期的に内視鏡検査に関連する研修会を開催し、また水戸市全体の胃がん検診成績と、個別医療機関の成績を含めたプロセス指標を参加医療機関にフィードバックし、精度管理の意識付けを行っている。

 上記の内容を含めた水戸市医師会と水戸市で実施・運用してきた胃がん内視鏡検査内容を報告する。

 

 

4)Helicobacter pylori未感染胃癌の内視鏡所見に関する検討

   永田 充(湘南藤沢徳洲会病院 肝胆膵消化器病センター)

【背景】Helicobacter pylori(以下、HP)未感染胃癌は胃癌全体の1%程度と報告されている。しかし、HP感染率の低下により増加する可能性があり、その内視鏡所見を把握しておく必要がある。

【目的】HP未感染胃癌の内視鏡所見の特徴を明らかにすること。

【対象と方法】2015年10月から2016年11月の期間で当院にて治療を行った胃腫瘍115病変から腺腫5病変、残胃癌2病変、進行癌37病変を除外した早期胃癌71病変を対象とした。HP未感染胃癌の定義としては、除菌歴がないこと、尿素呼気試験または血清HP抗体測定を一つ以上行い全て陰性、病理学的に背景粘膜に萎縮や腸上皮化生がないこと、内視鏡的に萎縮がなく胃体部にRACが観察されること、以上の4点を全て満たすものとした。対象となる病変をHP未感染群(7病変)、HP感染群(64病変)に分類し、患者背景、内視鏡所見について比較検討した。

【結果】HP未感染群は全部で7例あり、胃癌全体の6.4%だった。全て当院の健診の内視鏡検査で発見されESDにて切除された早期胃癌だった。性別はHP未感染群で男性5例(71%)、HP感染群では男性49例(77%)で有意差は認めなかったが、年齢(中央値)はHP未感染群で55歳、HP感染群では75歳でありHP未感染群で有意に若かった(P<0.05)。組織型はHP未感染群で未分化型が2例(29%)、HP感染群で1例(2%)であり、HP未感染群では有意に未分化型の割合が高かった(P<0.05)。部位はHP未感染群でU領域が3例(42%)、HP感染群で9例(14%)であり有意差は認めなかったが、分化型癌に限った検討ではHP未感染群でU領域が3病変(60%)、感染群で9例(14%)であり、有意差を認めた(P<0.05)。肉眼形態、色調に関しては有意差を認めなかった。なお、胃底腺型胃癌は2例認めたが、いずれもHP感染例であった。

【結語】HP未感染者に対しても、出来やすい胃癌の特徴を念頭に置いた上で、丁寧な観察を行う必要がある。

5)大腸内視鏡検査受診歴のある便潜血陽性患者における検査間隔と発見病変の関係

   小西 潤,小林 望(栃木県立がんセンター 消化器内科)

【背景】大腸がん検診は逐年の便潜血検査が推奨されており、要精検者には大腸内視鏡検査が行われている。その中には過去に大腸内視鏡検査の受診歴がある者も含まれるが、前回内視鏡検査からの期間と発見病変との関係については明らかでない。より効率的な検診プログラムを策定するために、前回大腸内視鏡検査からの期間別にみた、精検大腸内視鏡検査での発見病変の違いを検討したため報告する。

【対象】便潜血検査陽性のため、2013年2月から2016年12月までに当センターにて大腸内視鏡検査を行った1785名中、当センターにて内視鏡検査の既往が有り、前回検査の詳細が検索可能であった343名。前回検査からの期間が3年までの患者152名をA群、4年から6年までの患者98名をB群、7年以上の患者93名をC群とした。当センターにて便潜血検査陽性のために初回内視鏡検査を行った999名をD群(コントロール群)とし、腺腫性ポリープの有無、10mm以上のポリープ、浸潤癌について比較を行った。

【結果】各群における腺腫性ポリープの有無は、A、B、C、D群でそれぞれ59例(38.8%)、45例(45.9%)、51例(54.8%)、532例(53.3%)であり、10mm以上のポリープについては5例(3.2%)、6例(6.1%)、6例(6.5%)、114例(11.4%)であった。また浸潤癌については2例(1.3%)、0例、2例(2.2%)、43例(4.3%)であった。

【結語】腺腫性ポリープの頻度は検査間隔が長くなるに従って増加傾向にあり、とくにC群においてはD群とほぼ同程度であった。10mm以上のポリープおよび浸潤癌では、いずれの期間でもD群より低頻度であった。症例数に限りがあるため今後のさらなる検討が望まれるが、特に浸潤癌や10mm以上のポリープについては、1回の検査による抑制効果が長期間に渡り持続する可能性があるものと考える。これらの効果を考慮することにより、より効率的な検診プログラムの策定につながる可能性が示唆された。

6)本院従業員の大腸癌4例の経験

   佐藤巳喜夫,海老原次男(龍ケ崎済生会病院 消化器内科)

【背景】本院は2001年11月に開業した210床の二次救急病院(従業員430名、医師数40名、医療圏10万人)である。開業以来2017年までに従業員・元従業員4名の入院治療を要する大腸癌を経験した。4名の背景を検討し、より早期の大腸癌発見の提案を行う。

【症例1】200X年発症、40歳代、女性(医師)。S状結腸癌、多発肝転移。有症状だったが羞恥のため受診が遅れた。出身地のがんセンターで化学療法施行。

【症例2】200X年発症、70歳代、男性(医師)。S状結腸癌。当院にて手術。現在まで再発無し。

【症例3】201X年発症、40歳代、女性(看護師)。直腸癌、多発肝転移。有症状だったが羞恥のため受診が遅れた。他院にて手術・術後補助化学療法施行。

【症例4】201X年発症、50歳代、男性(元技師)。S状結腸早期癌。無症状で受診。本院でESD施行。

【考察】ほぼ4年に1例の頻度で治療対象となる大腸癌の発症がみられた。男性は無症状あるいは有症状早期に受診し当院で治療を行ったが、女性は有症状でも受診が遅れる場合があり他院に治療を依頼した。女性の受診・治療が遅れたり他院に依頼する理由には羞恥が大きく関わっていた。従業員から大腸癌死を出さないためには無症状あるいは症状出現時早期の大腸内視鏡検査が有用である。そのためには、職員検診環境の整備や、女性が安心して受診できる検査環境の整備が必要と考えられた。

【結論】従業員から進行大腸癌を出さないために、受診環境・検査環境・検診環境の整備が必要と考えられた。

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