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《教育講演 Ⅰ》

胃がん検診入門

講師 : 入口陽介(東京都がん検診センター)

(第1会場 13:30~14:35)

 

 胃がんは,現在も罹患者数は増加し,部位別にみると第2位,死亡者数は横這いですが第3位であり,積極的ながん対策が必要であることはいうまでもありません.また,進行度別の5年生存率を当センターの予後調査でみてみますと,早期癌:92.3%,進行癌:48.5%であり,早期癌で発見することが,救命において,いかに重要であるかがわかります.したがって,症状がほとんど出ない早期胃癌で発見するためには,定期的ながん検診が必要です.昨今,早期癌で発見できれば救命だけでなく,内視鏡治療などの低侵襲治療で完全治癒できるため,早期発見のメリットが益々高まっております.一方,進行癌に対しては,抗がん剤治療に分子標的薬,がん免疫療法などが急速に進歩し有効性が高まっておりますが,1人にかかる莫大な治療費や身体的負担などを考慮すると,やはり,がん検診で早期発見・低侵襲治療が大切で,医療費抑制においても重要であることを再認識いたしております.十分といえない,がん検診の受診率向上のための啓発活動もより積極的に行うべきです.

 対象集団の死亡率減少効果に有効性が認められている検診方法は,平成27年9月の改訂で,胃X線検査と胃内視鏡検査の2つ方法となり,検診の対象と検診間隔は,X線検診が40歳以上で逐年,内視鏡検診が50歳以上で隔年です.がん検診は,無症状の受診者に対して行う検査であるため,診療で行う検査とは異なる部分も多く,全国どこで受けても安全で精度の高い検査として提供する体制作りが重要です.そのため,厚労省健康局がん・疾病対策課から「事業評価のためのチェックリスト」および「仕様書に明記すべき必要最低限の精度管理項目」が指針として出されておりますので御参照ください(ホームページで閲覧可能).

 胃X線検診では,撮影法,読影の補助,読影基準(議論中),プロセス評価と精度管理体制はほぼ整ってきており,さらに向上・発展させていくことが必要です.撮影における画像精度は,全国統一された撮影法「基準撮影法I,II」を用いること,胃がん検診専門技師認定制度では,NPO消化器がん検診精度管理評価機構が試験を行い,日本消化器がん検診学会が資格認定を行っておりますが,その技能検定試験でも基準撮影法で撮影された画像を提出することが求められております.まず,基準撮影法の撮影技術をマスターし,次に読影力を身につけることで撮影技術を向上させ,撮影中の透視観察で病変を発見していく,あるいは病変が無いことを確認していくことが精度の高いがん検診において必要です.撮影を担当する診療放射線技師が,バリウムを自在に操って,撮影中に発見していく姿は素晴らしく,当日は動画を用いて説明させて頂きます.

 また,内視鏡検診では,本学会から出版されました胃内視鏡検診マニュアルをもとに,安全で精度の高い検診方法としての構築が,今後,検討され決まっていくものと思います.精度の高い検診を行うため,ダブルチェックを効率良く行うための内視鏡観察・撮影法について,当センターで行っている観察・撮影法を動画・静止画を用いて説明させて頂きます.

 胃X線検査で用いる撮影法,二重造影法は我が国で開発され,また内視鏡検査で使用する内視鏡機器や内視鏡治療法までも,そのほとんどは日本で開発されたものです.したがって,先人が築いてきた我が国の消化管診断学は,日本のお家芸で世界の中で冠たるものがあります.がん検診の現場でも継承し発展させていくことこそが,日本のがん医療のなかで果たす役割と思っております.  

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