《ランチョンセミナー》
大腸CT読影法入門
講師 : 国立がん研究センター 永田浩一
(第1会場 12:00~13:05)
大腸がんの多くは腺腫のうちに治療することで、大腸がんを予防することが可能である。しかし、予防するための大腸精密検査は患者さんにとって、身体的、精神的そして時間的負担が大きく受診までのハードルとなっている。
近年、注目されている大腸CT検査はこのハードルを取り除く可能性が示唆されている。それは、物理的に器具を挿入しないため、患者さんの身体的・精神的な負担が大きく軽減されるからである。さらに、大腸CT検査は検査室の滞在時間が10分程度と短く、鎮静剤を使用しないこと、炭酸ガスを使用することから、検査後、直ちに日常生活に戻れる特徴がある。さらに、大腸精密検査で最大の負担の一つ「大量の腸管前処置・下剤の服用」を大幅に軽減することも可能な検査法である。
欧米では大腸CT検査の特徴に早くから注目し、大規模な精度検証が行われてきた。米国ではNational CT Colonography Trial(ACRIN6664)が実施され、その結果として内視鏡検査に対する大腸CT検査の非劣性が証明された。欧州でも、ドイツ、イタリア、さらにフランスなどで臨床試験が成功している。これらの成功を受けて、米国ではUS Preventive Services Task Forceをはじめ複数の公的機関から大腸がん検診の検査法の一つとして大腸CT検査が推奨されるに至った。欧州でもNHSガイドラインやEUガイドラインでは内視鏡検査に次ぐ精検法として挙げられている。
日本でも消化器内視鏡専門医による大腸内視鏡検査の診断をゴールドスタンダードとした大腸CTの2つの大規模精度検証Japanese National CT Colonography Trial(JANCT)、およびUMIN6665が公表されており、ともに非劣勢が証明された。
http://www.nature.com/ajg/journal/vaop/ncurrent/full/ajg2016478a.html
http://pubs.rsna.org/doi/full/10.1148/radiol.2016160320
大腸がん検査法として、便潜血検査と大腸内視鏡検査は今後も重要性を増していくであろう。一方で、精検受診率を向上するために、そして内視鏡挿入困難例、高齢者、そして内視鏡を拒否する患者さんなど従来フォローしきれなかった患者さんを中心に、大腸CT検査の役割も増えていくと予想される。このランチョンセミナーでは、大腸CT検査の読影法の入門編として分かりやすくお話をさせていただきます。既に実施されている医師・診療放射線技師の方々にとっても、日本や世界で精度検証を経た世界標準の読影法について改めて見直す機会になりましたら幸いです。